塩顔男子とバツイチ女子




ドアをノックする音がしてすぐ、なつみさんが入ってきた。


「お疲れ様」

「お疲れ様です。先に休憩もらってます」

「蒼くん、ずっと佐藤さんの相手してくれてたんだってね。ありがとう。佐藤さん、悪ガキっぽいけど面白い男だって褒めてたよ」

「褒められてんだか、けなされてんだか分からないけど」


蒼は不満そうに言っているけど、顔は満更でもなさそう。なつみさんは俺の正面―――蒼から一席離れて座った。


「北斗くんもありがとう。山城さんがとっても助かったって」

「いえ。役に立てたならそれで。なつみさん、食事ありがとう」

「大したものじゃなくてごめんね。食事の事を伝えるのすっかり忘れてて」


和風ハンバーグにポテトサラダとトマト、根菜と高野豆腐の煮物にわかめとネギとお豆腐のお味噌汁。デザートに苺。


「なつみさん、食事は?」

「食べてきちゃった。寝たきりの人の食事介助があるんだけど、おしゃべりしながら一緒に。介助するだけと一緒に食べるのとでは全然違うのよ。自由に動けないからいつも一人でしょ。だから一緒に食べると喜んでくれるし、食事も進むから。時々おかわりしてくれたりもして」


なつみさんは嬉しそうにニコニコしている。一緒に食べる辺りがなつみさんらしい。忙しい中でもちゃんと一人一人の事を考えて仕事をしているんだな。


「なつみさん、全然戻って来ないからやっぱ忙しいのかなって北斗と話してて」

「ごめんね。昼食までには一度戻れるかなと思ったんだけど、時間なくなっちゃって。でも今日は全然忙しくないよ。人手足りてるし、二人が来てくれてるから」