塩顔男子とバツイチ女子




「マジすげーな。なつみさん、毎日こんな事やってんだ。俺には絶対出来ない」


お昼は蒼と一緒に食事介助を手伝った。病気の後遺症等で自分で食べる事が困難な人、誤嚥の恐れがある人、理由はそれぞれ。それ以外にも食事中に急に動き回ってしまう人や、食事をひっくり返してしまう人、職員さんはあちこちに手を取られながら、それでも迅速に仕事を片付けていた。なつみさんは結局戻って来なくて。

俺達は一時間の休憩をもらっている。お昼はなつみさんの奢りだという。味付けは薄味だけど美味しい。
休憩室には他に誰もいなくて、ほとんどの人が事務所で何かしら仕事をしながら食事をしているという。


「でも蒼、モテモテだったんでしょ」

「そりゃあね。モテっつーより掛け合い漫才みたいだったけど」


俺が山城さんと戻った時には、蒼は佐藤さんとテレビを見ながらあーでもないこーでもないと言い合ったり、一向に覚えてもらえない自分の名前を覚えさせようと連呼してみたり、お菓子を持たされたり、不良みたいな頭をしてるわりにはそうでもなさそうだと言われていた。


「お前は何してたの」

「片付けの手伝い。車椅子だと不便な事が多いんだなって改めて思った。腰が悪いって言ってたから、動くの辛いみたいだし」


山城さんは杖があれば少しは歩けると言っていたけれど、寒い時期はどうしても腰周りの筋肉や膝関節が硬くなって痛みが出やすいらしい。


「何か考えちゃうよな。俺のばーちゃんはまだ元気だからいいけど、親だっていつかはそうなるかも知れねーし」

「確かにそれはそうだな。いつどうなるか分からないからね」


自分の親の事を改めて考える機会なんてなかなか無いし、まだ若いからこそ全然想像がつかない。両方の祖父母もピンピンしてるし。