塩顔男子とバツイチ女子




「大学では何を勉強してるの?」

「経営学を専攻しています。いつか自分達で商売を出来たらと思って」


大学を出たらそれぞれ就職する予定だし、いつか実際に自分達で商売を出来るのかは分からない。けれど学んでおいて損は無いし、蒼も何だかんだ言いながら頑張ってる。優斗は服飾って事もあって、ここ数ヶ月は縫製の課題に追われているみたいだけど。


「そしたら北斗くんは将来の社長さんね」

「えっ、俺は社長って玉じゃないです。全然社交的じゃないし」

「社交的な人が向いているとは限らないわよ。しっかりと物事や人を見極める目と冷静な思考力も大切。北斗くんはそれを出来るタイプじゃないかしら?」


山城さんは、夢に向かって進んで行けるのは幸せな事だと言った。俺は蒼と優斗に出会うまでは夢なんてなくて、それなりに収まるべき所に収まるのだろうと漠然と思っていた。でも優斗はすでに服を作りたいという夢があって、蒼もファッションに関わる仕事をしたいという夢があって。二人はそれならばいつか自分達の理想を詰め込んだお店を出そうと話していた。

『けど俺達、服は自分達で出来るとしても、その他が出来ねーんだよな。商売の事なんて全然分かんねーし、ちゃんと勉強しなきゃいけないだろ?北斗、頭イイしやってみねぇ?』

蒼のその一言がきっかけで、俺は大学での専攻を経営学に決めたんだ。


「なつみちゃんも毎日頑張ってるし、二人共それぞれ大変だと思うけど支え合える人がいるっていいわね」

「なつみさんには全然敵わないです。俺なんかより毎日ハードだし。…俺がちゃんと支えになりたいんですけど」

「特に何をしなくても好きな人が隣にいるだけで心強いものよ。自信を持って」


山城さんとみすみさんはやっぱり似てるな。言葉がスッと入ってくる。お昼近くまで整理を手伝ってから、山城さんと下に降りた。