「いつも香ちゃんなんだけどな」

「祥太くんが風邪気味って。圭さん、雰囲気が蒼にそっくりだった。いきなり、北斗!って呼ばれてびっくりしたけど」

「ごめんね。圭、ほんとにバカ…」

「楽しかったよ。圭さんの高校時代の話を聞いたりして。番号も交換したし」

「えっ、ほんと?圭にしつこくされた?」


圭は遠慮しないからな…。とりあえず北斗くんがドン引きしていなくて良かったけど。圭の事だから何でもない用件で連絡したり飲みに誘ったりしないといいな…。後で圭に言っておかなくちゃ。


「全然。普通に喋って、自然な流れで。見た目はスカしてるけど喋るとそうでもないって言われました」

「自分の見た目気にしろって感じだよね」

「なつみさん、高校生の時に付き合ってる人いた?」

「いたけど。どうして?」

「そういう話になって。圭さんはお母さんに偶然見られてバレたけどなつみさんは相手がいたのかどうか、圭さんもみすみさんも知らないって言ってたから」


あ~…圭は多分、香ちゃんとニケツしてたやつだな。家に帰ったら母に説教されていた圭がブチ切れて、火がついた母にビンタされて。それを見たから私は尚更バレないように気をつけてたっけ。


「聞いたと思うけど圭が説教されてるの見てたから、バレないようにしようと思って。私は高校が遠かったの。電車で一時間半くらいだったかな。相手とは家離れてたし、ここら辺で会う事は絶対なかったからバレずに済んだのよ」

「そうだったんだ」


懐かしいな。たった十年くらい前の事なのに、北斗くんに聞かれなかったら思い出す事もなかった。


「なつみさん、デートしませんか。俺、もうすぐ春休みだから」

「いいよ。どこに行く?」


高校生の頃、考えもしなかった。結婚して離婚して出戻ってくる事も、北斗くんと出会って付き合っているなんて事も。人生は予測出来ない事ばかりだけれど、それも悪くない。

せっかくのデートだから、久しぶりに新しい服でも買おうかな。