珍しく定時で上がれて、いつぶりかも分からないほど久しぶりに早い時間に家に帰った。とは言え引き継ぎやら日報を書いていたから、結局は十九時を過ぎているのだけれど。
ガレージに車を停めた時、ちょうどスマホが鳴った。着信を知らせる音だ。母か職場か―――少し憂鬱な気持ちで画面を見ると、北斗くんからだった。


「もしもし」

「北斗です。なつみさん、今大丈夫?」

「大丈夫だよ。ちょうど帰ってきて車停めたところ」


北斗くんと電話するのなんて初めてだ。いつもトークアプリで、それすらも時々なんだけど。


「そうだったんだ。何かいつも連絡しそびれちゃって…俺、マメじゃないから」

「私こそごめんね。仕事ばっかりで」

「なつみさんの所のボランティア、蒼も一緒に行きます」

「ほんとに?じゃあ、詳しい事は後でまとめて送るね」


蒼くんも来てくれるなら賑やかになりそうだ。基本的には話相手になってくれる人が重要で、親睦や交流を深めてもらう事が目的。災害時等に地域で助け合えればお互いに役立てるし、施設での生活を知ってもらうキッカケにもなる。


「あ、美白ちゃんは?」

「玉木には言ってないです。蒼と一緒になっちゃうと何だかんだうるさいから」

「美人で気立ての良い女の子もいればな~って思ってたんだけど」

「…すいません。男二人で」


電話越しに北斗くんが少しむくれたような気がして。どことなく声が拗ねているというか。


「そういえば今日、圭さんに会いました」

「…圭?」

「はい。なつみさんの弟の」


何で圭?どこで?一瞬フリーズしてしまったけれど、すぐに北斗くんの声がした。

「みすみさんのお店で。ちょうど圭さんが野菜の配達に来て」