塩顔男子とバツイチ女子



みすみさんは思い切り圭さんの頭を小突くと、圭さんはマジで痛い、暴力を振るわれたと頭を押さえながら騒いでいた。ますます蒼に似ている…。


「てか、何だっけ。すげー話が逸れた感あるけど。母ちゃんクソうるせーから、北斗気をつけて。この前の俺の一撃以来、姉ちゃんに対してどうなってんのか分からないけど」

「俺がお母さんに会いに行ったらどうなりますかね?」

「うーん…追い返されて塩を撒かれるか、とりあえず家の中に入れられて一方的に母ちゃんにダメ出しされて放り出されるか…。ばあちゃん、そんな感じでしょ?」

「そうだろうね。でもホクちゃんは冷静に切り返し出来るから。その冷静さに芳恵ちゃんが怒って火を噴く感じじゃないの」


みすみさんすごい。あの日、なつみさんのお母さんはもの凄く怒りを堪えた顔をしていて。俺と話をしている時も相当怒っているんだろうなと感じていた。それ以上に俺も内心怒っていたんだけれど。


「北斗がわざわざ母ちゃんに会いに行く必要なんかねーよ。何が気に食わないんだか分かんないけど、今時年の差なんて騒ぐ事じゃねーだろ。別にそこまで離れてないし、姉ちゃんなんか金も持ってないし。母ちゃんは周りから色々言われるのはめちゃくちゃ嫌がるのに、自分はうるさく言って面倒な事するんだよな」

「金目当て…」

「ま、そこまでは疑ってないと思うけど、そういう風に思い込むのも無くはない。姉ちゃんが母ちゃんとモメたとしても、さすがに自分で何とかするでしょ。それより北斗、番号教えてよ」

「あ、はい」

「姉ちゃん、マメじゃないっしょ?離婚してから仕事ばっかりしてるし」


番号を交換した後に圭さんはコーヒーを啜りながら言った。「北斗って見た目はスカしてる感じしたけど、喋るとそうでもないね」と。やっぱり圭さんは蒼に似ている。だから話しやすかったのかも知れない。圭さんと話したってなつみさんに言ったら驚くかな?