「お義母さんは知ってたの?なつみが大学生と付き合ってるって」

「私はそんな野暮な事を聞かないわよ。そういうのは察しないと。芳恵ちゃん、わざわざ追求するっていうのが良くないわね」

「追求したくなりますよ。なつみが離婚したのはもう知れ渡ってるけど、付き合ってるのが大学生だなんて知れたら何を言われるか…」

「姉ちゃんが若い男捕まえるなんてな」

「圭よりも年下だなんて、あんた本気なの?」


日曜日の昼下がり。すっぴんで眼鏡で髪の毛は寝癖がついたまま。昨日、というかもう日付が変わっていたから今日だけど、深夜に帰ってきて寝たのは明け方。
それなのに母からの電話で起こされた。


「娘の恋愛に口出す事ないでしょうよ。もう立派な大人なんだから。芳恵ちゃんも自分の心配したらどうなの」

「自分の心配?」

「これだけうるさく言ってたら自分に何かあっても、誰も世話してくれないわよ。圭が香ちゃんに愛想尽かされて出ていかれたらどうするの。誰がどう見たって芳恵ちゃんの責任だからね


「香ちゃんは出て行きません」

「ばあちゃん、勝手に俺の家庭を崩壊させないで」


あの日、私は駅まで北斗くんを送って行って。それからすぐ、ばあちゃんに電話をした。母と北斗くんが鉢合わせした事や北斗くんが私を庇ってくれた事を話すと、相変わらずの母の口うるささに、ばあちゃんはケラケラ笑った。そして、怯まずに自分の意見を言った北斗くんが立派だと褒めていた。


「姉ちゃんはどうなの?本気?」

「本気って、将来どうするのかってこと?」


圭はコーヒーを啜りながら、違う違うとかぶりを振った。

「違うよ。そんなの今から考えられないじゃん。向こうは大学生だろ。姉ちゃんは本当に好きなのかって事だよ。話聞いてる限りは向こうも遊びってわけじゃないみたいだし」