ずっと俺の足元にいたナッツはお母さんが帰ると同時にこたつに戻って行った。

俺、完全にやってしまった…。

「すみません」

「どうして北斗くんが謝るの」

「俺があんな事言って、後からなつみさんが嫌な思いするのに。もしかしたらみすみさんも。でも黙っていられなかった。前になつみさんが辛い思いした事、聞いてたから。肩身が狭いって言ってたのも思い出して」


なつみさんの事になると俺は本当に普段と違う行動を取る。さっきの俺はかなり熱くなっていた。表情にこそ出ていなかったと思うけど。
自分の好きな人の事を悪く言われるのは許せなかった。


「さっき、本当は私がちゃんと北斗くんとの事を言わなきゃいけなかったんだよ。でも全部、北斗くんに言わせちゃって…ごめんね」


申し訳なさそうに謝るから。自分がした事が正しかったのか、なつみさんの面子を潰してしまったのか分からなくなる。なつみさんなりにお母さんと折り合いをつけてやってきているだろうに、完璧に俺が水を差してしまった。


「私の事は気にしなくて大丈夫。ばあちゃんの事もね。…私、離婚してから本当にずっと肩身が狭かった。弟は家業継いでしっかり奥さんと子ども養って、その奥さんもすごくしっかりしてるのよ。子育てしながら畑仕事もやってさ。私はずっと一緒にいた相手の変化にも気づかなくて…そりゃあ外に女作るよね。今となっては逆に申し訳なかったなって思う」


逆に申し訳ないなんて、そんな事はないと思う。結婚していながら不倫して子どもまで作って、申し訳ないなんていうのは元旦那さんがなつみさんに言うべきなのに。


「北斗くん、前にも言ってくれたでしょ?肩身が狭いなんて思う事ないって。だからもう、そう思うのはやめる」