「変わってるなんて事ないと思うけど。みんなそれぞれ生まれ持ったものは違うんだから」
なつみさんも狭い常識にはとらわれない人。
昔から口に出されなくても、変わっていると思われているのは感じてたし。一人でいるのが好きで冷めていて感情が面に出なくて、無口だから取っ付きにくいと思われる。蒼はそれを突き破って来たけど。初めてなつみさんと飲みに行った時、最初はとっつきにくいと思ったと言われた。でも俺の細かい変化にもちゃんと気づいてくれて。
「なつみさんのそういうところ、好き」
「ん?」
「先入観とか偏見とかないとこ」
「ばあちゃんがそういう人だから、私もこう育ったのかも。うちは母がうるさいでしょ?昔からそれをフォローしてくれたのが、ばあちゃんだった」
なつみさんは空いたお皿や器をキッチンに運びながら言った。確かにみすみさんとなつみさんは似ている。
「あの、なつみさんのおじいさん――みすみさんの旦那さんは?」
「私が高一の夏に亡くなったの。…胃がんだった。進行が早くてね、検査を受けた時にはすでに転移もあって…余命を告げられた。私が介護士を選んだのは祖父がきっかけ」
もしかしたら…とは思っていたけど。亡くなっていたんだ…。
「苦しい時期は緩和ケアの病棟で少し過ごして、最期はこの家でみんなで看取った。介護の知識があったらもっと上手にケアしてあげられたのかなぁって思って。それでね」
なつみさんはとっても優しい顔で、今でも心の中にちゃんとおじいさんがいる事が分かった。自分がやりたい事を仕事にして、どんなに忙しくても頑張っている。なつみさんはやっぱりかっこいい。

