なつみさんは朝から少しずつ料理を仕込んでくれていたようで、日が落ちる頃には部屋の中はいい匂いに包まれていた。
こたつがあって、ヒーターがあって、テーブルの上にはミカン。それからテレビではお正月の特番をやっていて。雰囲気こそ自分の家とはまったく違うけれど、どこか落ち着く。
「あっ、聞くの忘れてたんだけど…北斗くん、動物は平気?」
「はい。昔、犬飼ってたんで」
俺が中学生の時に亡くなったけど。トイプードルの雄を飼っていた。
「起きてきた」
料理をしているなつみさんが足元を指さすから、こたつを出てキッチンに向かう。
「あ、」
「猫部屋があるんだけど、大体そこで寝たり遊んだりしてるの。ものすごい寒いからエアコンつけて、猫用のこたつにもぐってるんだ」
なつみさんの足元にいたのは雌の三毛猫。みすみさんが五年前、友達の家で生まれた子猫を引き取って飼っているという。名前はナッツ。
「猫がいるなんて思いもしなかった」
「トイレとか全部猫部屋に置いてあるから。ばあちゃん、猫好きなのに家を侵食されるのは嫌なんだって。普段こっちの部屋で過ごしてる時間も多いし、ばあちゃんの部屋にも入ってるんだけどね。よくそこの縁側で日向ぼっこしてるんだ」
キッチンから居間まで続く長い縁側は、分かりやすく言うとサザエさんの家のような縁側。確かにここに来た時はまだ昼間だったから日当たりが良くて、じゅうぶん暖かかった。
ナッツの頭を撫でると、なつみさんの足元でおとなしく座ってくれている。
「ナッツは人好き?」
「どうかなぁ。私は最初、ものすごい警戒されて威嚇されたけど。いつの間にか懐いてきてたよ」
毛並みが良くてツヤツヤしてる。目はぱっちり丸くて、なつみさんみたい。

