「はーい」

「こんにちは。北斗です」


なつみさんが戸を開けてくれる。久しぶりに見るなつみさんはやっぱり少し疲れた顔をしていて、でも綺麗だった。


「明けましておめでとうございます」

「おめでとうございます。ここまで迷わなかった?」

「全然。目印見ながら来たから。お邪魔します」


中に入ると正面に階段、左には長い廊下があって。右の扉を抜けるとダイニングキッチン、その続きに畳敷きの居間があった。しかも琉球畳。みすみさんのセンスかな?


「これ、母からです」

「えっ、お母さん?」


なつみさんは心底驚いている顔で袋を受け取ってくれた。


「なつみさんの家に行くなんて一言も言ってないのに持ってけって押し付けられて。あと、よろしく伝えてって」

「ありがとう。北斗くん、お母さんに私のこと話してあるの?」

「詳しい事は何も。風邪引いて寝込んでた時に、何でか分からないけど恋愛相談みたいな事になっちゃって」


誰かいい子はいないのかと言われて、いるようないないような…と返したような。それからなぜだか俺が高校時代に振られた話にまで及んで。かいつまんで話すと、なつみさんは笑っていた。


「北斗くんのフラれた理由、面白過ぎる。でもまあ、若い子なら尚更色んな所に出かけたいよね」

「なつみさんは?アウトドア派?」


俺のコートをハンガーにかけると、居間から続いている左側の和室の鴨居にかけてくれた。


「私?うーん…出かけるのは割と好きだよ。でも仕事が続くとどうしても休みは睡眠で潰れちゃう。昨日も起きたら夕方過ぎてて。あ、こたつ入って」


なつみさんは激務だったから、この二連休は貴重だと思う。明日はまた夜勤って言ってたし。