「別れたい」なんて言わないって言ったのに…


嘘ばっかり…


それでも好き…


避けていた茉叶の家。


今なら大丈夫。


「ごめんください‼」

「はーい‼咲雪‼久しぶり‼」

「久しぶりだね‼」


茉叶は変わってない。


「咲雪こっち‼」

「うん‼」


庭でバーベキュー?


この感じ…何か嫌…


「ねぇ…茉叶、何か嫌な予感する…」

「いいから‼」

腕を引っ張られて来た場所には…


大好きな彼の姿…

何で…

やっと…乗り越えられそうだったのに…


髪の毛短くなったね…

少し痩せたね…


話す事…見つからない。


気まずい空気。


笑えないよ…私は。


まだ好きだし…。


「あっ‼飲み物なくなった…」

そう言う茉叶のお兄さん。

これはチャンス‼

「あっ‼私、行ってきます‼」

誰の返事も待たずに外にでた。


やっと空気が吸えたような。


このまま帰ろうと咄嗟に持った荷物。


茉叶にメール。

「ごめん…帰る」


会いたくなかった…。


カッコよくなってたし…。


ケータイが鳴らない事に慣れてきたから…


今は会えない。


また…今以上に好きになったら…立ち直れないから。


薄暗い道…。


茉叶の家と近い皇雅の家。


下を見ながら歩く。

よく、歩いた道。


「………咲雪ちゃん?」


顔を上げてしまった…。

皇雅のお母さん…。


「違います…」


「待って?」


「ごめんなさい‼人違いです‼」


走り出そうとした時…バッ‼


腕を掴まれた…


びっくりしすぎて、心臓がうるさい程動く。


「咲雪…」


この声…


聞きたかった…


腕を掴む手に触れたかった…


ずっと…


だけど…「ごめんね‼私…いるの知らなくて…空気読まずに来ちゃった…今帰るから楽しんで…」


そう言って手をほどいた。


顔は見ない。


意味不明に私は頷いて歩き出そうとした時…


「俺が…呼んでもらった…」


「何で?」


「会いたくて…」


「勝手じゃない?今、やっと落ち着いてきたの‼」


「だけど…会いたかったから」


「別れないとか言って簡単に私を振ったのに…今になって会いたいって…勝手だよ」


「そうだよな…ごめん…」


「謝るくらいだったら…呼ばないでよ…」


「俺は咲雪を忘れた事ないよ…」


嘘つき…

見てみない振りしたじゃん…

皇雅のトラック何度も見たよ…


「私だって忘れた事ないよ‼でもね…」


「これ…」


ネックレスだ…「何で?」


1時間探したんだよ?


「どこにあったの?」


「みさきが持ってた…」


「咲雪、みさきに何かされたんだろ?」


「私が呼び出しただけ…」


「茉叶から聞いたから…俺、みさきと話し着けたよ…」


そう…話したんだ…茉叶はお節介だね…。


「その時、渡された…」


だけど…「何で直したの?私に何をしてほしいの?」


「これ…もう一回…着けてもらえない?」


「はっ…?」


「もう…泣かせたりしないから…もう一度信じてもらえない?別れたいなんて2度と言わないから…」


そんな事言われたら…好きだから…無理なんて…言えない…


「私は今でも好き…」


「俺もずっと好きだよ…地下鉄のホームのポスターも…ケータイで写して持ってた…」


「私に気づいた?」


「茉叶に教えたの…俺だから…」


そう…気づいたのは皇雅だったの…


さすが茉叶って思ってた…


いつもそう…


「みさき…さんは?」


「アイツから連絡はもう来ない…」


「何でわかるの?」


「話ししたし、彼氏に止めてもらったから…」


「彼氏…いたの?」


「いたよ…会社の先輩だけど…我慢できなくて…止めてもらった」


「狭いね…世間って…」


「狭いな…」


その笑う顔好き…困ったように笑うその顔…


ネックレスを触るクセ…


変わらないね…


「俺…別れるんじゃなくて、ちゃんと話せばよかった…」


私が返事をしようとした時…


「本当だよ‼あんた酷かったもんね‼落ち込んじゃって‼」


「母ちゃん…いいから‼」


そう…母ちゃんの存在忘れてた…。


母ちゃんはずっと話し聞いていたって事?


それを考えただけで顔から火がでそう…。


「それでさ…」

「母ちゃん‼」

「はいはい…後はお二人でどうぞ」


母ちゃんは家に入って行った。

ちょっと不満そうに…。


「俺たち抜け出そっか‼バーベキュー‼」

「どこに行くの?」

「ここ…」

「近い…ね…」

「じゃあ…海‼」

「行く‼」


しばらく行ってない…海。


車の中には私の膝かけも…プリクラも…

そのままだった…


私はしまった思い出。

皇雅はしまわなかったの?


「ねぇ…」

「何?」

「お腹すいた…」

「俺も…」


話す内容も一緒。


離れていた時の話しになった。


「足…大丈夫?」

「うん…今は立てなくなるのほとんどないかな…」

「よかった…」

「高校を辞めた時は不安ばっかりだったけど…」

「そうだよな…そんな時に支えてやれなくてごめん…」

「本当にね…」


意地悪してみた。


夜の海は静か。

波の音もキレイに聞こえる。


車を降りて砂浜に立った。

「咲雪…これ…あげる‼」

「何…?」

「クリスマスにあげようと思ってた…」

「今…夏だよ?」

「いいじゃん…」

「あけていい?」

「いいよ…」


赤い封筒…?

手紙?

プレゼント…ではないよね?