コーヒー屋さん…??
だよね。

看板らしきものは、木で作られていて、台風でも来たら飛んでしまうんじゃないか。
壁も、少し緑がかっていてツタが巻きついてるところもあって。

ドアが少し開いていなかったら、きっと入れなかったと思う。

入口まで続く石をよけながら中を覗くと、そこはこじんまりとしたカフェだった。

ちっちゃいテーブルが2つと、カウンター席が6つ。
そのカウンター席の真ん中で、腕を組んで寝ている人が1人。
白いワイシャツに黒いエプロンのその人は、窓から入る夕日を浴びて、少し伸びた前髪がキラキラ輝いていて。
その全てが綺麗で、思わず見とれてしまった。

店員さん…、かな。

気持ちよさそうに眠っているこの人を見ていると、なんだかすごく幸せな気持ちになった。


……起こすのも悪いし、他にお客さんもいないみたいだし、帰ろう。

そう思って、一歩を踏み出したら。
コツンって私のローファーが音をたてた。

その音で、さっきまで寝ていたその人は、パッと起きあがって、慌ただしく椅子から飛び降りて

「いらっしゃいませ!」

って、大きな瞳をぎゅっと細めて子供みたいな無邪気な顔で笑った。