この高校に来て、初めての1日が終わる。

いろんな人と喋れたし、先生の言っていた通り、みんな素敵な人たちだった。

でも、まだ気は抜けない。
叔母さんに頼ってばかりではいられないから、これからアルバイトだ。

仕事は、美容師。
お母さんがお父さんと結婚する前に働いていた美容院で、小さい頃からお世話になっている所。叔母さんに引き取られることが決まって、すぐに働き始めたから、仕事は大部覚えた。

美容師と言っても、まだまだ見習いでハサミを持たせてもらえない私は、まず掃除から。

お客さんが来たら、案内をして、シャンプーの補充・タオルの洗濯、カラーの在庫確認と予約の受付……。

目まぐるしく働いて、美容院が閉まったら、マネキン相手にカットの練習。

「永遠ちゃん、じゃあ、鍵よろしくね」

いつも最後までいるから、鍵を閉めるのは私の役目になった。

早く1人前になりたくて。
無心で練習して、気づくととても遅い時間になってしまう。

でも、少しでもお母さんに近づけたような気がして、ちょっと誇らしい。
カットしたマネキンが、お客さんであることを想像すると、とても楽しい気持ちになる。

それが、前を向く指針になる。

「あっ…、明日も学校あるんだ。」
そろそろ帰らなきゃ。

深夜3時、日付を超えてから家に帰るこの道も、葉が揺れる音、少し冷たい風、月明かりに照らされた街並みが、朝とは違った輝きを見せる。

明日という日に期待を膨らませ、布団に入る。