「第1号のお客様特典で、コーヒーのお代はいりませんよ!」
帰りがけ、さっきの店員さんがそんなことを言い出して。
「いえいえ、それは。第1号特権でお礼、ということで払わせてください。」
「えぇー。じゃあ、ずっとコーヒー1杯無料というのはどうでしょう?」
「いやいや。申し訳ないですし、そんな事したら…」
お店大変じゃないですか。
と言おうとした言葉を遮って、
「春。そんなんしてたら儲けでないどころか大赤字だろ。何やってんだ。」
カウンターの奥から声が聞こえて、見ると店員さんと同じエプロンをした男の人が立っていた。
「しばらく戻ってこないから、何やってんのかと思ったよ。せっかく来たお客さんに、コーヒーただとかしてたら、この店"また"経営出来なくなるよ。」
「また、を強調するなよ!!
でも、そうか。じゃあ、別のにしてもらお。」
うーん、何にしてもらおうかな?
って考え込む店員さん。
……いえ、悪いし何もいりません。って言いたかったけど。
なんだか、奥から出てきた人に見覚えがあるような気がして、考え込んでしまっていた。
「桜だよな?俺、同じクラスなんだけどわかる?」
そう言われて、もう一度見ると、思い出す。
「もしかして、隣の席の…?」
何君だっけ……。
「そう、秋山だよ。」
そっか。秋山君。
こうして見ると、制服の時より大人っぽくて何よりあんまり気にしてないからわからなかった…。
秋山君は、同級生で隣の席で。でも、あんまり喋ったことなかった。覚えててくれたのは嬉しい。
さっき話してる感じからしたら、もう1人の店員さんも同級生かな?秋山君はバイトかな?
思うことはいっぱいあったけど、うまく言葉にならない。
「えっと…」
「桜ちゃん!!」
喋りだそうとした言葉は、店員さんの言葉で遮られた。