「お好きな席へどうぞ!」

さっきまで寝ていたことを忘れさせるような元気で言われ、帰りますとも言えず…。
カウンター席の1番端っこに座る。

「実はね、このお店、しばらく経営してなかったんですよ。今日は営業再開初日で、僕が経営して初めての日なんです。だから、僕にとって、第1号のお客さんです!」

そう言ってまた笑顔をつくるその人を、まるで太陽みたいだと思った。

「第1号のお客様、ご注文は何に致しますか。」

「じゃあ、コーヒーお願いします。」

「かしこまりました。」

そう言って、奥へ行った店員さん。

その姿を見送ると、とても心が暖かくなった。

ずっとずっと、ひとりで頑張って、何となく寂しくて、でも我慢して。
そんな気持ちが溶けていくみたいだった。

しばらくすると、コーヒーのいい香りが漂ってきて。

「お待たせしました!」

そう言って、笑顔で出されたコーヒーは驚くほど美味しかった。