お墓の前にしゃがみこんで、手を合わせている。月命日だから、お参りに来ているのか?

…いや、そうではない。

星は、肩を震わせていた。…泣いてる。

その理由は、わからない。…一人にすべきなのか?

ぎゅっと、花束を握り締めた。

泣いてる星を、一人にしておくなんてこと出来ない。

俺は、星の横に立ち、花束を墓前に供えた。

物音に気づいた星が、こちらを見て驚いた顔をしている。

その顔は、涙でぐちゃぐちゃ。

…この手に抱き締めたくても、速水社長の言葉が脳裏をよぎり、抱き締められず、拳を握りしめるしかなかった。

…そんな俺に、抱きついてくれたのは、星だった。

…自分も苦しいはずなのに、俺のことばかり考えてくれて。

速水社長も、星の母親も、そして、星も。

自分のことより、他人を気にかけてくれる。

その深い愛に、俺は心を完璧に奪われた。



…俺の腕の中で泣きながらも、優しく微笑む星に。


「…心から星を、愛してる」



愛の言葉を囁いた。



星は驚きつつも、満面の笑みを見せ、こう言った。



「…私も、星空が好き…愛しています」



俺は、星を、ぎゅっと、ぎゅっと、抱き締めた。