…星は今、何を考え、何を想っているんだろうか?

抱き締めている星を、壊さないように、優しく包み込む。

…この想いに気づくまで、20年かかった。

星はまだ赤ん坊で、俺もまだ15歳だった。

突然の事故に遭い、母を失った星。…自分がいなければ、こんなことにはならなかったかもしれないと、何度思ったかしれない。

だが、謝罪に向かった俺は、星の父である速水社長に責められることはなかった。

『明美の行動に間違いはなかった。君にはまだこれからの未来がある。決して自分を責めるな。後ろを振り向くことなく、前を見て進みなさい』

最愛の人を失ったと言うのに、速水社長はそう言って、自分や星の事より、俺の心配をしてくれた。

…それからというもの、学校が終わると、毎日のように星の顔を見に行った。

速水社長は、仕事で不在。その間は、ベビーシッターが星の世話をしている。

ずっと、一緒にいることは無理だか、数時間だけでも、共に時を過ごした。

すくすくと育っていく星。

それを見ていることが、何よりの楽しみになっていた。

だが、毎日のように行っていた星のところへ行くことが、高校を卒業する頃には、無理になってきて、大学に行き始めたら、毎日が、2、3日おきになり、1週間おきになり、、最後はとうとう、星の元へ行くことも出来なくなった。

それでも時々見かける星の姿が、どんどん大きくなり、綺麗な女性へと変わっていく様を見るのが、嬉しくもあり、会えなくて、寂しくもあった。


…それから、星が、二十歳の誕生日を迎える日に、俺は再び速水社長の元を訪れた。

…星を、手元におきたいと考えてのことだった。