「…どうしてあのとき、言ってくれなかったんですか?何もかも、自分が悪いと、独りで背負う気だったんですか?」

「…実際、星は母親の愛情を知らずに育った。どれだけ寂しい思いをさせたか…俺があの場にいなければ、あんなことにはならなかった」

…星空は私の手を、ぎゅっと、握り締めた。

「…母はただ、見ず知らずでも、自分に親切にしてくれた星空を助けたかっただけじゃないですか。母は亡くなってしまったけれど、悔いてはないと思います。…私だって、寂しい思いはしたけど、父や秘書の安住さんが、沢山沢山愛情をくれました。二人も父がいるみたいで、鼻が高かったんですよ」


私の言葉に、振り返った星空は、私の頬に、そっと触れた。

「…星空だって、私に優しく接してくれてたじゃないですか…そこに、愛情がなくても」

同情でも、私に寂しい思いをさせまいと、努力してくれてた。

「…星」

「…もう、私の事で、苦しまないでください。さっきも言いましたよね?私には、二人も父がいるって。寂しくないですよ」

もうこれ以上、苦しまないで。

私の想いは、心の中に、閉まっておくから。

「…どんなに笑顔を作っても、泣いていては、説得力に欠ける」

その言葉にハッとした。…無意識のうちに涙を流していたなんて。

「…星、お前は、俺に愛情がないと言ったな?」
「…罪悪感と、同情、ですよね」

私の言葉に、星空は困ったように微笑む。

「…星、俺の心の中にはずっと、お前が住み着いてる。お前に囚われて逃れられない」

「…だから、それは」



「…お前だけが、ずっと、あの時から、愛してやまない人だ」


…これは、夢なのだろうか?驚く私を、星空はぎゅっと、抱き締めた。