…私って、こんなに感情的だったかしら?

数時間前の自分を思い出し、そんなことをふと思う。そしてよくよく考えていると、すこぶる恥ずかしくなる。

だって、あれは、誰がどう見たって、ヤキモチだ。…好きだって言ってるのと同じだ。

ソファーの上でジタバタしてみる。

「…何をしてる?…大学はどうした?」

頭上からそんな声が聞こえて、ピタリと止まる。…大学は、今日は自分の受ける講義がないので行かないのだが。

「…お休みです…東條社長こそ、会社はどうしたんですか?」

「…星と同じだが?」

「…平日ですよ?」

「…1ヶ月も休まず働いたんだ。一日くらい休んだって何の問題もない。何かあれば、会社から連絡が来る」

「…お疲れ様です」

…ここに来て、星空のラフな格好は初めて見た。完璧オフなんだろう。星空の言葉は、最もだ。1ヶ月も休みなしなんて、普通の社員なら、労働基準局に訴えられるが、社長なので、仕方がない。

「…コーヒー、飲みますか?」
「…頼む」

…今朝の失態を帳消しにしようなんて、無理な話だけど、コーヒーを淹れると、ソファーに座った星空にそれを手渡した。

「…ん」
「…ん?」

目配せされても、何を言いたいのかわからない。

「…横に座れ」
「…どうしても?」

「…」

睨むように見られ、私は渋々星空の横に座る。…って!

…コーヒーをテーブルに置いた星空は、何を思ったか、私の膝を枕に寝転んで、目を瞑った。

固まる私。…無防備に眠る星空。


なんだか可愛いと思ってしまった私は、星空の髪を優しく撫でた。

…。その手を捕まれた。


「…今朝、ヤキモチを妬いて、暴れたのは、これで帳消しにしてやる」

「た、叩いたくせに」


「…それは、本当に悪かった。…ごめん」

目を開けた星空は、叩いた頬を優しく撫でた。

「…素直すぎて、キモいです」
「…お前なぁ」

困惑の表情の星空を見て、可笑しくなって笑ってしまった。