「…彼女って何の話だ?」
「…とぼけちゃって」

「…星、何を見た?何を聞いた?憶測でものを言うのはやめろ。大体、おもちゃってなんだ?俺は星をおもちゃなんて思った事は、一度もない」

真剣な眼差しでそう言われ、私は口ごもる。

「…言わなければわからない」

「…昨日、ホテルで」
「…ホテル?うちのか?そこで何を見た?」

「…私とは正反対の美女と、腕を組んで歩いてた」
「…」

…星空の顔色が変わった。…やっぱり彼女なんだ。

「…私の事なんて、放っておいて下さって結構です。貴方の邪魔はしませんから、その人のところへいってくださ」

パチン。軽く、私の頬を叩いた。

…なぜ、私が叩かれなければならないのか?

「…落ち着け。憶測でものを言うのはやめろといった筈だ。アイツは彼女でもなんでもない。俺の嫁は星、お前だろ?俺は、星、お前を…」

言いかけて、やめてしまった。その代わり、また、私を抱き締めた。

「…東條社長、ぶつなんて、酷いです」
「…すまない…感情が高ぶりすぎた…もう二度としない」

そう言った星空の顔は、本当に申し訳なさそうな顔で。

「…東條社長」
「…星、俺は、お前以外の女とどうこうなろうなんて思わない」

…私をお金で買った、星空。

そんな星空が、そんなことを言う。

「…いいんですよ。私と東條社長は、契約結婚なんですから。好きなようにしてくれたら…取り乱してしまってすみませんでした」

困ったように呟けば、星空は私をより一層、強く抱き締めた。

「…星は、何もわかっちゃいない」

その言葉の意味は、私にはきっとずっとわからないだろうな。

そう思わずにいられなかった。