目が覚めると夜の8時30分

下の階から物音が聞こえると言うことは家族が帰ってきてるのだろう

トイレと食事以外では部屋を出ないのであまり関係ないが

今日はあまりゲームに長居するつもりはないので飯はゲームを辞めてからにするつもりだ

ライトはリクライニングの椅子に腰掛けるとゲームの電源を入れヘッドギアを被る
ロードが終わるピロンと音がすると
自分の意識が遠のいていく

【仮想空間内】
ライトは小さな小屋で目を覚ます
頬を風が撫でた、窓が開いていたのだろう
寝ていた場所から起き上がり、人差し指を自分の前にかざして横にスライドする

何も無い空間から長方形のタッチパネルが現れる

装備と書いてある欄を押すと装備一覧が現れた
その中からフード付きのジャケットのアイコンとズボンアイコンブーツアイコンをタップして確定ボタンを押すと
足元に魔法陣が現れる、足元から上に魔法陣が上がってくる
そして頭の上まで魔法陣が上がりきると
魔法陣が消えた

さっきまではTシャツにスウェットのようなかっこうだったライトのアバターは
ちゃんとした服になっていた

ちなみにライトのアバターは男だ
ライトは-ZERO-でネナベ(ホントは女性なのだがゲームでは男性でプレイすること、逆ならネカマという)
をやっている
ライト曰く男性アバターの装備がかっこよかったかららしい

ライトは草原に建っている拠点の小屋を出て少し歩いた所で空中に手をかざしボソッっと呟いた

「現れよ剣!」

何のひねりもない言葉だが
ゲーム内では魔法の呪文や技の名前以外は、自分が認識出来て入れば何でもいいらしい
だから他のプレーヤーも殆どがこんな感じだろう

現れた剣を構え助走を付けてジャンプし
そして持っていた剣を横に薙ぐように振る

ライトは着地後体を低くし若干体を前に傾け、足に力を貯めるように踏ん張りリレーのスタートダッシュのように地面を蹴ると、体はすごい勢いで前に進み
突きの様な攻撃を繰り出す

しばらくこのようなことを繰り返す
これはライトがゲームに入ると必ず行っているしっかりと体がゲームに接続しているかを確認する行為だ

それが終わるとライトは汗を、持ち物欄から出現させたタオルで拭く
痛みを感じるのだから当然汗をかくし疲れる
現実では体に負担はないがゲーム内ではそうも行かない
敵を倒し、ステータスを上げれば体は現実ではできない動きも出来るし、あまり疲れなくなるが、ライトは接続確認の後のこの疲れは結構好きなのだ
どうやってこんなゲームを作ったのか不思議だがそれほど日本の技術は凄いのだろう

始めた時は相当疲れたが、それでも現実世界よりは遥かに動けていた

ステータスが上がれば自分の最大値までは設定出来る
ライトはこうゆう時だけは丁度いい設定にしている
もちろん強い敵相手には全開で行くが

「そろそろ行くか」

今回このゲームに入った目的は新しい武器の材料調達と錬成そして
誰とも関わらないと噂されているが唯一関わりのある人の手助けをするためだ

先に材料調達をすることにする










グレイア山

転送魔法を使いグレイア山へやって来たライトはさっきとは違う剣を出現させる

さっきのは接続確認用の剣
今回のは実践用の剣
重さは変わらないが見た目が違う

柄の部分にはルビーの様な石がはめ込まれ刃の部分は透明に近い薄い赤色をしている、これはこの剣が炎属性だと言う事を示している

魔法は色々種類があるが属性を連結させて結合魔法を作ることも出来る

2つ以上の属性を持つ敵にはとても効果的な攻撃だ

これはまた別の時に話すとしよう

向かって来る敵を切り倒していく
ここのモンスターはボス以外はあまり強くはない
ボスはそこそこ強いがライトにとってはあまり関係ない事

しばらく歩くと開けた場所に出る、ボスの部屋だろう、だけど視線の先にボスはいない

「あぁ?何でいねぇんだ?」

周りを見渡すがいない

「クソッ...先に討伐されたか」

自分が来る前に先に討伐されると、次に現れるのに時間がかかる場合がある
でもここに来るまでに戦闘の音は聞こえなかった、つまり

「どこかにいるな」
そう言って感覚を研ぎ澄ます

そうしてるうちに頭上から僅かな息遣いが聞こえてきた

「いた」
ライトの表情が変わる

そして頭上に向かって装備しておいた二本のナイフを勢いよく投げた

「ギャァァァァァァッ」

モンスターが地面に落ちてきた
投げたナイフは両目に刺っている

硬そうな鱗に覆われたドラゴンのモンスター

ファイヤードラグーン

ランクC
属性 炎

小型で体長は10mほど
それでも十分でかいのだが

これが今回の討伐対象となる

ランクはそれほど高くはない、しかしこいつの厄介なところはとても攻撃の威力が高い
なので討伐に苦労するプレーヤーも少なくない

しかも今回の透明化出来ることがわかったので、もっと厄介な敵になる

多分透明化は一ヶ月前のアップデートの時に追加されたものだと思う




しばらくしてドラゴンが起き上がり、ライトに向かって咆哮(ブレス)を撃ってきた
目を潰しても的確に攻撃してくると言うことは鼻がきくらしい

ライトは地面を強く蹴り空中へ飛び上がり剣を構えると、落下の速度が加わった剣をドラゴンの背中に突き刺す

しかし硬い鱗に阻まれ剣は刺さらない

「グアッ!」

ドラゴンが尻尾を背中のライト目掛けて振る

「うわっあぶねぇ!」
そんなことを言っているがライトは余裕でそれを避ける

今日はあまり時間をかけてられないライト

「あ〜しょうがねぇな、もう決めないと時間ねぇや」

そう言って空中に手をかざすと魔法陣が現れる、その中に持っていた剣を差し込み、そして抜く

魔法陣から出てきたのは赤く燃える炎を纏った大剣

相手も火属性なので相性はあまり良くないが、相手のレベルを上回るライトには関係ない

「さぁやるか!」

ライトは思い切り地面蹴って走り出す
あまりの脚力に地面がひび割れる

「はぁっ!」

物凄い早さで敵に向かっていくライト

「グガァッ!」

相手もこちらに気づき向かって来る

衝突寸前にライトは前に僅かに踏み込み角度をつけて飛び、ドラゴンの頭に乗る、
そして鱗が薄いうなじに剣を突き刺す

さっきとは違う
手応え
「入った!」
一気に剣の炎の火力を上げ、ドラゴンへ炎を流し込む

「燃えろぉぉぉぉお!」

「グッギャァァァァァアアアッ.....ア...ァ.....」

最後の悲鳴をあげドラゴンは力尽きた

「ふぅ...完了っと」

足元のドラゴンが無数の光の粒となって消え、ドラゴンのいた場所には2枚の鱗と2本のヒゲが落ちていた

ライトは鱗だけを拾う

「あ〜、やべぇ急がねぇと完璧遅れんじゃんこれ」

と言いながらも急ぐ気のない足取りでライトはこの場を後にした