(─────は…。)









は?、と



思わず声が漏れそうになるのを
必死で抑える。







……知らない人と、同居?




今日からここに住め?




…同居して『差し上げます』?










………や、や…やっぱり……










(これって拉致監禁─────?!)










「これは誘拐でも拉致でもありません。
ご心配せずとも、貴女のお父上にはもう同居の許可を頂いています。」

「いやっ!誰か助け……って、え?」










まるで私の心の声を読み取ったように

彼が私にそう告げる。








許可をもらってる…?

お父さんから…?








………。









「…そ、それはつまり
私はお父さんに見捨てられたってことですか…?」

「全く違います。」










私の答えに呆れるように
彼は息を吐くと、



私の顎から手を離して


少し距離を空けてから
私の目線に合わせて、体を屈める。








そして────










「─────申し遅れましたが

私は英国海軍少将、
伊勢幸次郎(いせ こうじろう)と申します。

貴女の許嫁です。」










彼はそう言って


被っていた帽子を脱いで
私に、頭を下げた。