真山も席に戻ってから、私のノートと取り違えたことに気づく。
真山の席は私の隣の列の3つ後ろの席。人を介すにも投げるにも微妙な距離だ。仕方ない。この時間は真山のノート使うか。
私は真山のノートを開いた。
最悪だ。真山のノート、見づらい。行間空けろよ。宿題どのページか分からないし。何で一番新しいページに書いてないの?
無理、やっぱり返してもらおう。
先生の目を忍んで後ろを向くと、真山と目が合った。真山は親指を立ててグーサインを出した。
グー!じゃないよ!
私は真山にノートを返してと目立たないようにチェンジと身ぶり手振りに口パクを加えて示した。真山は私のノートに「どうやって?」と大きく書いて見せた。私も真山のノートに「投げて」と書いて見せた。真山はコクリと頷いた。
先生が黒板に板書し、背を向けている間を縫ってのやり取り。今のところ私たちの動きはバレていない。私たちは次に先生が背を向けた時に投げようとスタンバイした。


