新品のナイフの柄を握り締める。

“ガチャツ”

“ドタドタドタ!”

物音が聞こえる。

力を入れすぎて、震えていた手の力を緩める。

その時だった。

少し力を緩めた手からナイフが消えた。

一瞬何が起こったのかわからなかった。

後ろから力強く抱きしめられる。

爽やかな匂いがした。

先輩の匂い…。なんで…。

必死に先輩の腕の中から逃げようとすると、すぐに解放された。

後ろを向いて先輩を見る。

悲しそうな顔をしていた。

先輩…なんで悲しそうな顔をしているの?…

私は我に返った。

再び、ナイフを握り準備をした。

こんなはずではなかった。

だけど、好きな人の前で死ねるのならこんなに嬉しいことはない。

刺そうと動かしたその時にまた手が加わった。

次は、手が握られている。

というか、抑えられている。

今度ばかりはどうあがいても無駄だった。

先輩が目の前に来た。

もちろん私の手を抑えたまま…。