優来side

「はぁ...」
今は10月、はじめましての教室の前で派手にため息をついた私は佐伯優来。
なんで10月にはじめましてかっていうと、私は親の都合で引っ越して転校してきた転校生なのだ。でも新しい学校生活に希望なんかもってないし期待すらしていない。元々この転校は3日前に急遽決まりなんの準備も整ってない状態だし私は乗り気じゃなかった。
「佐伯優来でーす。部活は帰宅部でしたー。よろしくお願いしまーす。」
適当に無愛想に自己紹介をして、席についた。休み時間に入ると転入生を一目見ようと廊下にはたくさんの生徒がいる。もちろんいい気はしない。そんな事考えてたら
「優来ちゃん??私は藤崎紗奈!よろしくね!」
藤崎紗奈ちゃんという子が元気に自己紹介をはじめた。
「佐伯優来だよ。よろしく。」
私達はお互いを紗奈、優来と呼ぶ友達になった。紗奈とはモデルが好きだったりテーマパークが好きだったりと気があって普通に楽しく話した。そんな感じで初日は無事終了した。次の日から紗奈と紗奈の友達たちとも会話をするようになったでも、私が話す内容は決まって...
「前の学校ではもっと自由だった。」
「前の学校は制服もっと可愛かった。」
「前の学校は...」
「前の学校は...」
口から出るのは「前の学校は」決まってこの言葉だ。しかも見栄を張って嘘ばっか並べてる。こんな事言ったら嫌われる。文句言われる。ってことは自分でもよく分かってた。でもこれを言ってなきゃ自分が自分じゃなくなるみたいで怖い。予想通り同級生からの私のイメージはボロボロで、あることないこと噂は何個あるか数えられないほどにまでなった。すれ違う度に
「佐伯とかいう奴さー、まじ転入生のくせに調子乗りすぎだから。」
「そんなにこの学校に文句言うなら来んなー。出てけよ。」
こんなふうに言われるのはもちろん見栄を張る嘘の罪悪感にももう慣れたんだ。