悪役の私






…それから私は、何度も優を誘った。




会えばまた、悲しい思いをすることはわかっているのに。




断られて、傷つくのは自分なのに。





このまま何もなかったのように優に忘れられたくない。




そんなことを思ってしまったんだ。





会いたいよ…。



手を繋ぎたい。



抱きしめて。



キスをしたい。




…なにも言わなくても、繋いだ手を握り返してくれるだけで私は一日中笑顔でいれたよ。



1ヶ月に一回あるかのほんの何時間かだけだけど、会える時間がとっても貴重で、でも悲しくて。




前を歩く優の後ろ姿が、冷たい。




私は伸ばしかけた手を、そっとしまう。