悪役の私






旅行当日。

ん〜、なんていう旅行日和!!!



電車の中で待ち合わせをした私達はたまたま会ったフリをしながら隣に座る。


誰が見ているかわからない状態の中旅行の話は出来ないけれど、この人とこれから2人きりのところへ行くんだと思うだけで、心臓がバクバクする。




東京駅に着き、私達はやっと旅行の話をはじめた。



「私、昨日楽しみすぎて眠れなかった」



「俺も。」



本当に?なんて言いながら笑い合う。




穏やかな時間。



新幹線の中では手を繋いだまま眠り、気が付けばもう箱根に到着!!!!




箱根駅を下るエレベーターの途中、優は後ろから優しく私を抱きしめる。



「やっと、堂々と出来るね」



すごく驚いたけど、それと同時に泣きそうな程の幸せを感じた。



「…幸せ」


気が付いたら私は抱きしめてくれる優の腕をきゅっと包み、そう呟いていた。



「…俺も」



チラッと優の顔を見ると、今まで見たことのないくらい優しい顔をしていた。





その後はずっと手を繋いで、この間優とカラオケで調べた色々な場所を回る。



現地で有名なソフトクリーム屋さん。



ガラス工房。



バス乗り場。




初めての場所で何もわからない私を、優はまるで全部知ってるかのように「こっちだよ!」と手を引いてリードしてくれる。