悪役の私






「只今フラットシートの2人用のみご案内出来ますがいかがなさいますか?」



店員の言葉に躊躇もせず、お願いしますと答えた私達は寝転がることができる部屋が空いてるなんてラッキーじゃんってことくらいしか考えていなかった。




小さな仕切りの中に入った私達は漫画を読んだりするわけもなく、とりあえず横になる。




今までの疲れがどっときて、深い眠りに……






・・・いや、無理。




膝を曲げないと2人入りきらない程の狭いスペース。


すぐ横には優がいて。



こんな状況の中、眠れるわけがない。



むしろラブホの方がまだ距離感取れたのではないか…



私はチラッと優を見る。
優と目が合った私の胸はドキッと音を立てた。




私はすぐに顔を背けてあまり意識しないように目を閉じた。




えっ……。




私の手の上に重なる優の手。




その瞬間、私はもうなにも考えられなくなる。




どうしてだろう。



悲しいわけじゃないのに



暖かい気持ちになれるのに



目には涙が溜まってくる。



優にバレないようにそっと涙を拭った。