拗らせDKの偏った溺愛




ドアの横にあるガラス窓が一部割れています。

息を殺してそっと覗き込みました。

…そこは映画で見るような喧嘩が繰り広げられていました。

薄暗い建物の中で、男の人たちが10人近くで暴れ回っています。

よく見ると、どうやら1人に対して大勢の人が襲いかかっている様子。

おまけに素手の1人と、棒やバットのようなものを持った複数人の喧嘩のようです。

なんと卑怯な!!

ただ、1人だけで戦っている方は相当な強さのようで、襲ってくる人たちを的確に倒しているようです。

ど、どうしましょう…、確実に通報案件です!!!

一旦、ここを離れて近くの民家で電話を貸していただくのが一番早い…


「竜也くん!?」


思わず声が出て、大急ぎで口を閉じました。

覗いていた窓から目を離そうとした瞬間、私の目に飛び込んできたのは竜也くんの顔でした。

もしかして見間違いかもしれないと思って、もう一度目を凝らしてみました。

古い工場のくすんだ窓から差し込む陽の光は弱いものですが、トレードマークともいえる煌めく銀色の髪を目印にして意識を集中すると、その顔がよく見えました。

やっぱり竜也くんです。


「ど、どうしましょう…」


大正解は一刻も早く通報する、です。

でも、一瞬躊躇ってしまったのです。

通報=警察沙汰=学校にバレる=停学

という構図が頭をよぎったせいで。

そして、その一瞬が命取りでした。