「はぁ~」

己の情けなさに思わず溜め息が出る。

また一人。

孝也の目の前で裏路地へ人が入って行った。

自分も本来ならあそこに行かなければならない。

安っぽい腕時計に目を落とせば、あと十五分で受け付けが閉まってしまう。

本当は迷っている余地などありはしなかった。

今までの人生とこれからの人生のことを考えるとやはり進むしかない。


孝也は歩き出した。