中川は知絵と電話していた。
 
「ごめんなさい、波瀬美咲にスパイであることに気付かれたわ」
 
「ほんと使えねえな」
 
舌打ちした中川が気に入らなかったのか知絵はつっかかった。
 
「ならあなたがどうにかしなさいよ。人に指図ばかりしてないで」
 
「はっ。言われなくてもな」
 
電話を終えた中川の携帯は再び震えた。

ディスプレイには「雪村孝也」の文字。