「…………んんん……ここはどこなんだろうね………?」
「はぁ?なにをいっているんだい?可愛い我が娘よ」
「…………はぁ…………」
ため息ばかりが出る。白ウサギを夢の中で追っていたはずなのにいつの間にかお上品なドレスを着せられていて、お上品な家具や宝物に囲まれたお城の中で優雅な時を過ごすオトウサマとオカアサマに捕まった。
ああ、体がむず痒い。こんな扱い初めてだから仕方ないけれど。私を壊れもののように扱ってくるからイライラする。そんな簡単に壊れるような体じゃない、筈だ。
名前はオーロラだけど、それは私の名前じゃなくてお姫様の尊い名前だ。
私は絵本の中に迷い込んだみたいだ。
眠り姫は、確か小さい頃に呪いを魔女にかけられて糸車に指を刺して呪いのせいで眠ってしまって、王子様に助けてもらう、というお話だ。
(学校とか友達の顔とか思い出は一応思い出せるのに自分の名前とか全然思い出せない。基本的な知識は覚えてるのになぁ)
話しかけてきているオトウサマを余所に考え込む。私だけこの絵本の世界に来てしまったのかしら、と。それならなぜ来てしまったのか?
夢に出てきたあの白ウサギが原因だというのはわかるがなぜこの世界に連れてきたのかがわからない。ここはなんの世界なんだろう。
(疑問ばっかり浮かんでため息ばっかりでるな……)
────ワンス・アポン・ア・タイム───昔々、あるところに───これを唱えたから、ここに来たのだろう。


今はオーロラ姫となっている彼女はそう仮説を立てた。