「シンデレラ!早くおし!」
「はい、お義母様」
「シンデレラ!私の靴は磨いた!?」
「私のドレスにアイロンは掛けた!?」
「靴は磨いてお部屋に。アイロン掛けはこれからです」
「汚かったらやり直しだからね!」
「早くして!今日はアレが着たい気分なのに!」
「はい、お義姉様」
自分がシンデレラだと、すぐに気がついた。
なんて言ったって、意識がはっきりしたらすぐにお義母様と二人の義理の姉にすぐにしごかれることになったのだから。
「次にアイロン掛けたら、動物達にご飯あげて……お義母様のベッドメイキングと、お義姉様のアクセサリー磨き……あとは掃除ね」
夢で白ウサギに会ったその日に、何故かここにいて、シンデレラになっていた。
さんざん意地悪をしてくる義母と義姉達。シンデレラはその意地悪に耐えて、魔法使いのおばさんに魔法をかけてもらって憧れていた舞踏会にかぼちゃの馬車で参上して、魔法の切れる十二時前に階段を駆け下りてガラスの靴を落として王子様の前から消える。そして、彼が探し出してくれて。
ハッピーエンドで終わるんだ。
だけど私にはまだまだシアワセは訪れてない。
舞踏会は本当にあるのかな……と疑ってしまう世界だ。


昔は憧れていた。シンデレラに。
魔法使いのおばさんに助けてもらって楽だし、王子様と幸せになれるし。いいなぁって。
けど、本人になってみると想像以上に辛い。報われない努力と意地悪。

「……言わなきゃよかったかな」


─────昔々、あるところに────なんて、あのウサギの言うように言わなきゃよかったかも─────