そもそも彼は筆箱を持ってきていない。

これに気づいたのは授業が始まって3日ほどたった日だ。


勇太は毎日1時間目の前にこう言うのだ。

「ねぇ、藤堂、えんぴつ。」

私はえんぴつじゃない!!と心の中で反論しつつ、勇太専用の鉛筆を毎日持ってきてあげているのだ。

鉛筆だけじゃない。
定規、消しゴム、赤ペン・・・なんでも勇太の分を考えて2つ筆箱に入れていたのだ。
鉛筆に至っては、私はシャーペン派だったので勇太の為だけに持ってきていた。