小さい頃から初恋というものに憧れていた。
小学生の時も、中学生の時も、いつも周りはカップルがいて幸せそうに笑っていた。
当時から幸せというものが.....分からない。
おいしいものを食べても、友達と笑っていても、大好きな猫を触っていても.....私は幸せだと思わなかった。
中学生になって、少しずつ友達との恋愛話も生々しい本格的なものになり、
またその一方で、甘酸っぱい青春もあって。
見ていると皆とても幸せそうだ。と思っていた。

結果的にはその中学三年間もできるだけ頑張ったが.......
私は幸せになれなかった。
でも心のどこかで(簡単に幸せになったらつまらない。)と思っていたのかもしれない。
こんなつまらない私だが上辺の笑顔だけは得意だ。
八年前母が他界して、一人になった。
親族は私の所有権で揉めた。
「ねぇどうするの..あの子。」
「誰かが引き取るしかねぇ.....」
「うちは無理よ!ただでさえ厳しいのにあんな子預かるなんて!」
「だいたい×××が勝手に作った子供じゃない!」
「孤児院かしらねぇ...」
「え...でもそうしたら代々から受け継いでいる家系の信頼が...」
結果的に叔母の家に渋々預けられ、
そこからは上辺の笑みだけを浮かべ器用に生きて何もトラブルを犯さず静かに生きた。
しかしそろそろ上辺の笑顔も限界に近づいた頃、叔母が急死した。旅行先での事故だった。
そして晴れて今は一人暮らし、という身なのだ。
新しいアパートに引っ越した後、私は高校の制服に腕を通してこう決意した。
(高校では恋をして、上辺の自分だけを出さないようにしよう)と。
私の名前は....今日から「桜田真央」だ。