「全員、やめたんだよね。琴葉たちが話してたの、聞いてたらしい」

「え…?」

「琴葉のせいだよ。訴えるとか言うから、みんな怖がってやめていっちゃった」

「…そんなの、私たちに責任を擦り付けないで!元はと言えばあなたがっ!!」

首を捕まれ、息が止まる。お坊っちゃまは無表情のまま、私を見下ろす。

いや、なにか変だ。表情はないのに目が異様にぎらついてる。

まさか、お坊っちゃまは覚せい剤を服用し続けていたんじゃ…。

「使用人はやめたけど、すごい好都合だよ。前は邪魔されたけど、もう邪魔するやつはいないんだしさ」

「やめて」

「琴葉、なんで僕を選ばないわけ?あんな奴より僕の方がずっといいでしょ?」

「やめてよ」

「琴葉、僕だけのものになって」

ダメだ。全然声が届かない。

やっぱり、薬をやってるの?なんで、こんな人が…。

…ふざけるな。お金持ちだからって、こんな、好き勝手にされる言われないんかない!!

「っやめろって言ってんでしょ!!!」

「っぐ…」

渾身の力を振り絞って、足を自由にさせると、そのままお坊っちゃまの体に蹴りを食らわれる。

怯んだお坊っちゃまを押し退け、ドア目掛けて走る。

逃げなきゃ、逃げなきゃ!!

鍵すらかかっていないドアを開け放ち、外へ飛び出した。