無意識に、体が震える。

まずい…。本能が、告げる。

―逃げろ。

「ッ!!」

頭に言葉が響いた瞬間、立ち上がってドアに駆け寄る。ドアノブを回そうとして、びくともしないことに焦る。

そうだ、鍵…!

鍵を開けてドアを押し開けようとしても、ドアはびくともしない。

なんで!?なんで開かないの!?

「琴葉、おいで。大丈夫、優しくするから」

「っひ!?…っ誰か!!たすけ…っ」

背中から抱き締められた瞬間、走ったのは悪寒。

咄嗟に叫ぼうとした口は、伸びてきた手に完全に塞がれる。

「っんんー!!」

「ッチ…大人しくしろ!」

「っう゛…」

手がいきなり離れ、床に叩きつけられる。痛い…。でも、逃げなきゃ、逃げなきゃ!!

ドアに向かって伸ばした手は叩き落とされ、お坊っちゃまは私の体を跨ぐように乗ってくる。

「嫌!!離して!!」

「騒ぐな!!」

どこから取り出したのか、麻ヒモを手に持つお坊っちゃまに頭の中で警告が走り抜ける。

嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!!

必死に暴れてるのに、お坊っちゃまに捕まれた両手は振りほどけなくて、麻ヒモが巻かれていく感覚に恐怖がこみ上がってくる。