私のご主人様


―大嫌い。奥様なんか、だいっきらい

「違う…」

―一緒にいてくれないお父さんなんか大嫌い

「違う…違う…」

―香蘭の生徒なんかだいっきらい

「違う…」

違う、違う、違う…。

勝手に出てくる言葉たちを否定する。

だけど、否定する度に流れ落ちていく涙は、私を捨てているような気持ちにさせる。

泣きたくなんかない。私が泣くとお父さんが私以上に痛い顔をする。

そんな顔、見たくない。させちゃいけない。お父さんを苦しませちゃいけない。

だから、我慢しろ。私ならまだやれる。奥様のご機嫌をとっていられる。

だから、泣くな。泣くな、泣くな…。

成夜の胸に顔を押し付ける。

だから嫌なんだ。成夜のお昼寝は、私を弱くさせる。

泣きたくなんかないのに、涙が溢れて止まらなくなる。

どうしていつもこうなんだろう。なんで、成夜に抱き締められると泣いてしまうんだろう。

分からない。分からなくて、気持ち悪くて、成夜を起こさないように必死に泣き声を殺し続けた。