うつむいていると、顎を掴まれて顔を上げられる。目の前にある季龍さんの表情は見たことがないくらい冷たい…。

「もう二度と逃げられると思うな。次逃げたら、本当に首輪をつける。今の状態でいたいなら、これまで通り大人しく言われたことをしろ」

感じたこともないような威圧感に押し潰されそうになる。

体が動かない。息が詰まる。目の前にいるのは、本当に季龍さんなの…?

季龍さんのことを見つめ返すことしか出来ない。季龍さんは不意に口角を上げたかと思うと、次の瞬間畳に押し倒される。

慣れたように私の上にまたがる季龍さんの姿が、不意にお坊っちゃまの姿に重なる。

「っ!!」

嘘…嫌だ。もう、嫌…。

勝手に甦ってくる記憶。同時に体は熱を帯びる。

季龍さんの顔が近づいてくることに、固く目を閉じた。

「…奴隷になりたくなければ、分かったな」

耳元で呟かれた言葉。同時に離れていく体。

恐る恐る目を開けると、季龍さんは既に立ち上がっていて、部屋を出ていくところだった。