私のご主人様


駅の構内を抜けて、駅の反対側に出ると、目の前に交番があった。

「あそこだよ。着いていこうか?」

首を横に振る。ここまでで十分だ。頭を下げると、おじさんは気を付けてねって笑ってくれて駅の方へ戻って行った。

それを見送り、急いで交番へ駆け寄っていく。

「琴音ちゃんっ!」

「っ!?」

嘘…迷ってる場合じゃないっ!!

走ってくる奏多さんから視線を外し、すぐ目の前にある交番の戸に手をかける。だけど、その手を押さえるように奏多さんの手が重なった。

「!!」

「琴音ちゃんっ探したんだよ?ほら、帰ろう?」

「っ…」

違うっあそこは帰る場所なんかじゃない!!

奏多さんの手を振り払うように暴れても、それ以上の力で抱き締められて離れない。

嫌だっ嫌だ!!

助けてっ誰か助けてよ!!

どれだけ叫んでも誰もこちらを見るばかりで動かない。そりゃそうだ。私が叫んだつもりでも、実際には声なんか全く出ていないんだから。