私のご主人様


「若、ストップ。ここちゃん逃げたんじゃないんだって」

「あ?」

「今理由聞いてるところ。そんなに怒ったらここちゃん泣いちゃうでしょ?」

信洋さんのフォローのおかげで季龍さんは舌打ちしながらも手を離してくれる。

大急ぎで打った文章を、すぐに季龍さんに見せる。

『台所とか洗濯室とか、少し片付けて回ってました。迷惑をかけて申し訳ありません』

「んー?なになに…。ここちゃん仕事熱心だね…」

「…明日からでいいと言っただろう」

信洋さんも、季龍さんも驚いたように目を見開くと、困ったように私を見る。

タブレットを手元に戻してさらに打つ。言葉が出ないってこんなに不便なんだ…。

それを痛感しながらも、またタブレットを見せる。

『必要なもの、把握しておきたかったんです』

「…それで、何がいるのかわかったのか?」

差し出したのはメモ帳。そこに大量に並んだリストに、季龍さんはため息をつく。

「分かった。全部買っていい。メーカーもお前が使いやすいものを選べばいい。怒鳴って悪かった」

「!」

首を横に振る。私こそ、部屋に置き手紙のひとつすればいいのに勝手に動き回ってしまった。

こんなに広いんだ。いなくなったら、逃げたって勘違いされてもおかしくない。

今回は私のミスだ。