「…よりにもよって」

「…?」

「おい、あの細い方。あれはヤバイ。思い通りにならなければクスリを盛る。さっきの男もあの男の家族にやられた」

「っ!?」

「いいか、あいつの望みの通りに動け。抵抗するな。逆らえばもう二度と日の下に出られたないと思え」

こそこそと、私しか聞こえないようにして話す男に、悪寒が走った。

さっきの男の人…。壊れてしまったように正気を保っていなかった。

…甘かった。認識も、覚悟も、なにもかも甘すぎたんだ。

生きてればなんとかなるなんて、そんなわけない。1度でも失敗したら目の前にあるのは死だけだ。

「…やだ」

死にたくない。お父さんに、成夜に、みんなに会いたい。

嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ…。

誰か、助けてよ…!!

「…みなさん!私が落札をすれば、あの娘の服、今ここで切り裂きましょう!」

突然声をあげた長身の男。観衆はそんな彼に歓声を上げる。

もう1人の男は舌打ちし、ギリギリと歯を食いしばる。

「ならばこちらは、この場で犯して見せよう。もちろん、撮影しても構わない!」

言葉が飛ぶ。その声に、観衆は沸く。

嫌だ、どうしてこうなってしまったの?どうしてこんな目にあわなきゃいけないの。

声が遠くなる。暗くなっていく目の前の光景をただ、見つめることしかできなかった。