「え?」
七波の表情が固まった。
「だから、なっちゃん。
わたしね、なっちゃん、って呼んでたの。
で、なっちゃんはわたしのことりっちゃん、って」
「つまり、名前は覚えてないってことね?」
はぁ、と七波がため息を吐き、
手がかりはあだ名だけかあ、と呟く。
「申し訳ありません・・・・・・七波様」
「いいけどね、
見つからなくても私は困らないから」
「っ! 思い出します!
だから見捨てないでー!」
「無理しなくていいんだよ、りん」
「ううーありがとう、七波ー。
大好き! いいこいいこ」
りんは七波の頭を撫でた。
「はいはい」
といいながら、七波はりんの手を払いのけた。
「ぶー、七波いけずー。
わたしの精一杯のスキンシップを」
「はいはい、わかったから。
早くどいて、掃除当番の子たちが困ってるよ」
七波はりんの言葉を遮って、立ち上がった。
その言葉にりんが慌てて辺りを見渡すと、
ふたりが座っていた机以外は後ろに下げられ、
箒を持ったクラスメートたちが床を掃いている。
ふたりの周りだけを避けるようにして。
「あっちゃあ・・・・・・ついつい話し込んじゃった」
