キーンコーンカーンコーン。

「起立、礼。ありがとうございました」

「ありがとうございました」

チャイムと同時に、

今日の授業は終わりを告げた。

「はぁ~。

やっぱり、65分授業は疲れるよね~」

と机に寝そべるようにしながら

いったのは小倉りん。

「ね、5時間で終わるのはいいけどさ」

椅子を回転させてりんに体を向け、

答えたのは遠藤七波。

りんと七波は、中学からの知り合いで、

この春晴れて高校生になったばかりである。

高校でも偶然同じクラスになり、

さらに出席番号が近いということもあって、

名簿順の席では前後となった。

「うん。

あー、わたしなんでこの高校来たんだろう。

こんなにきついって知ってたら、

来なかったよー」

 りんは愚痴を溢す。

「あらまあ、りんちゃん?

まさかお忘れとは言わせませんけど?」

「うー、覚えてるよぉ。

先輩を探すため、でしょ」

りんと七波が

中学3年生の一年間受験勉強に励んだのは、

もちろんこの桜並木高校に

入学するためであるが、

入学して目的達成、というわけではない。

りんがもう一度会いたい人が桜並木高校に

いた、とりんの母親から聞いたからだ。

りんがその人と出会ったのは、

りんと七波が出会うよりずっと前、

りんが幼稚園のころ、

家族で旅行に行ったときのことだったという。

「で、その先輩ってどういう人なの」

「んん、いつも寝てる人。

目がくりくりっとしてて、かわいいんだよ。

うまく言えないんだけどね、

男の子だなんて思えないくらい。

でも、わたしよりずっと背が高くて、

かっこいいの」

歳は覚えていないけれど、年上だったと思う。

そう語ったりんの目は輝いていて、

七波もつい、初めて聞いたときに協力する、

と言ってしまったのだ。

「名前、覚えてる?」

「なっちゃん」

「え?」