「ごめんね、長々と。」



丘を降りようとしたとき。







「香山さん、でしょ。名前。」

「う、うん。」




「それ、偏見だよ。」



佐伯くんはメガネを取りながら言った。





「香山さん、昨日掃除当番じゃないのにたいして仲良くもない子と代わってあげてたよね。

みんながやりたがらないし、先生も困ってるからって委員長も引き受けてあげてたよね?



怖がらなくていい、比べなくていいよ。
俺がちゃんとみてるから。










香山さんがこの街からいなくなったら、俺が見つける。





帰ろう、雨脚が強くなってきてる。」






そういって振り返った佐伯くんの顔は
前髪も、メガネも、今まで佐伯くんを隠していたものはなにもない。



とても、かっこよかった。




「明日、朝7時ここで待ち合わせ。それじゃ。」