「・・・・・・・・・・泣いてる？」


佐伯くんが私にいった。




初めて聞いた声はなぜだかとても安心できて、
きちんと心に届いて、この人にならいってもいいかもって。

誰にもいってこなかった気持ちを伝えてもいいかなってそう思った。




「私ね。すごく情けないんだけど。聞いてくれる？」




佐伯くんは静かに頷いてくれた。






「２つ下に妹がいるの。美子っていうんだけど。
美人で、優しくて、頼りになって、両親とも美子のことが大好きなの。

小さいとき、名前決めなくちゃってなってね。
まだ生まれたばかりの美子に美しい子に育つようにってつけたんだって。

あたし、ピンクが好きでね。ピンクのバックを自分のおこずかいで買ったの。

なのに美子がそれをほしいってだだこねてお母さんがあたしに
『暦には似合わないから、美子にあげなさい。』ってしかってきて。

高校にあがったらご飯も美子の分しか作ってくれないし。

ひどいなって思うけど、あたしがこんなんだからいけないんだって言い聞かせてきたの。

近所のおばさんも、幼馴染も、両親も。きっとこんな狭い街の中で
あたしがいなくなったとしても誰ひとり気づかないとおもうの。」




頬に冷たいものがあたった。




雨。