「…悩んでんの?」

「え、わあっ!ぇ、えっと…う、うん。」

突然声をかけたことに驚いたからか、大きく揺れた彼女が転けないように支えて、すぐ離れる。
今日はよく転ける子に会うな。なんて他人事の様に思えば、また爽ちゃんの事を思い出して頬が緩んだ。

「カレーパン、美味いよ。数量少ないから、食えるときにくっとかないと勿体ないぜ。」

今日は嬉しいことがあったから。なんて女子みたいな事を言いながら、ぼうっと立つ彼女の手にカレーパンだけを持たせる。

「オバチャン、これちょーだい。」

「へ…?ぁ、ぉ、お金!」

「金とかいいよ。これ、俺のおすすめだから、良ければ貰って。」

真っ赤になった彼女にじゃあね。と手を振り教室へと戻る。爽ちゃんの友達だから優しくした。なんて天に知れれば、きっとまたからかわれるんだろうな。



ぐぅ。と鳴った腹の音を聞き、本来の目的を思い出した時には、何も持たないまま帰ってきた事をニヤニヤと笑う天にからかわれたのだった。


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