「勿論!」 

嬉しくてまた爽ちゃんを抱き締めれば、弱々しく腕が回される。

(今日が地球最後の日でも俺は後悔しないわ…。)

苦しくないように気を付けながら、何度も何度もギュウと抱き締める。数年越しの気持ちが届くように、いや…届かなくても良い。爽ちゃんが好きと言ってくれた。その気持ち以上のモノが伝われば、充分だ。

「あの、私ネガティブで一人じゃ何も出来ない弱い奴だけど…暮くんや千秋ちゃんと出会えて、強くなろうと思えたの。ありがとう。弱かった私から抜け出す理由をくれて。私、頑張って暮くんみたいに強くなるから。側で見てて欲しいな。」

「爽ちゃんは弱くて良いんだよ。」

「どうして?」

「爽ちゃんは無意識に強いから。」

「へ?」

「だってさ、俺や千秋ちゃんや天や横場を魅了してるんだぜ。それって充分爽ちゃんの強さだよ。」

「…それ褒められてる?」

「はは、褒めてる褒めてる。だって俺、小学校前の頃からずっと爽ちゃんに惚れてたし。だから爽ちゃんはそのまんまで良いんだよ。伝わる奴には君の魅力が伝わるから。それに、弱い自分を変えたくて自ら努力できるってすげえよ。俺は、俺のままで居れなかった。爽ちゃんと同じ見た目を変えたけど、それだけじゃ爽ちゃんの気持ちは分からなくて、天に出会うまでずっと塞ぎ混んでた…。でもさ、爽ちゃんは一人にならないように見た目を変えて、それを叶えたじゃん。それで、今も学校中の奴からモテてる。俺は独占したいけど…それってやっぱ爽ちゃんにしかできない強さだと思うよ。誰かに優しくするのとか、誰かを助けるとか、そんなのは適材適所(てきざいてきしょ)。できる奴に任せとけば良いんだよ。人間一人にできることなんて限られてるんだから。できないことを欲するのは勿論人間らしいけど、そうだなぁ…爽ちゃんはもう少し視線を上に上げてみたらどうかな。絶対、今以上の景色が見れるよ。」

一人で喋り続けてる間も、爽ちゃんはじっと俺を見つめて聞いてくれる。人の目を見て話す爽ちゃんを見るのも本当に久しぶりだ。

真面目な彼女の俯き癖を指摘して、今後またファンが増えるんだろうななんて思いながらまたキスをする。

(ファンが増えても、誰にも渡さない。)

ニコニコと笑う一番のライバル。アイツにも絶対渡さない。でも、礼は言わなきゃだよな。なんて悶々としながら、俺たちは手を繋いでそれぞれの教室へ戻った。



.