(やっぱり…。)

待ち受けていた言葉は予想通りの物で、また一層胸が痛む。俯いた私は今どんな表情をしてるのか、私自身も分からなかった。

「ぉ、おめでとう。」

精一杯紡いだ言葉は震えてしまい、慌ててニコリと表情を作って千秋ちゃんに笑いかける。続きの言葉を聞きたくなくて、それで話が終わればいいと思いながら…。

「ありがとう。でもね、私…フラれちゃったの。」

その気持ちを見透かされたように続けられた言葉は予想外のモノで、無意識にホッと息をついてしまったのが自分でも分かった。ハッと口を手で塞いでももう遅い。千秋ちゃんは眉を下げて悲しそうに微笑みながら、じっと私を見つめた。

「ねえさやたん。私が告白したって言ってどう思った?嫌だった?寂しかった?それとも…柊くんを取られそうで怖かった?」

「ち、違う…!違うよ千秋ちゃん。そんなことない、暮くんを取られるからなんて…絶対、無い。私は、千秋ちゃんの方がーーー」

「でも、あの時二人の関係を教えてくれなかった…私、あの後天から聞いて知ったよ。」

「っ…。」

「私は、さやたんから直接聞きたかった。」

ジッと見つめる瞳の奥に隠れる気持ちは分からない。怒ってるのかな。嫌われたのかな。そんな事ばかり考えてあたふたすることしか出来ないは、上げた顔をまた下へ戻すことしかできなかった。

(これで本当に一人になるのか。)

壊れた関係を修復する方法なんて、今まで学んでこなかった。だから、千秋ちゃんから嫌われたら終わり。そればかりが頭のなかで巡り続けた。

間違った私が、千秋ちゃんへなんて言えば許してもらえるのか。

簡単な「ごめん。」の言葉さえ、嘘に聞こえてしまうのではないか。

目の前にいる千秋ちゃんから目をそらし、私が半分以上諦めかけたときだった。

「さやたん、ごめん。」

ペチッと軽い音で頬に触れた小さな手。あまり勢いをつけなかったのか、じわじわと痛みが広がった。そんなに痛くないのに、熱くなる頬は涙を伴って…頬に触れている千秋ちゃんの手まで濡らしていった。

「私さやたんの事嫌いになんかならないよ。大好きだもん。嫌いになんて、絶対なったりしない。だからね、安心して私とお話ししよう。私はさやたんの口から、全部聞きたい。だって、さやたんは千秋の親友だもん。」

両手で頬を包まれて、コツンとおでこがぶつかれば千秋ちゃんの顔はすぐそばで綻んでいた。

(やっぱり強いなぁ…千秋ちゃんは。)

「私も、千秋ちゃんが大好きだよ。」

屋上で女子が二人、抱き合って涙を流す。メイクも髪型もボロボロにしながら強く強く抱き締め合う二人の空気は、穏やかな気候と同じ、暖かいものに戻っていた。



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